天然酵母のパンは一昔前までは自然食品を扱う店や限られたパン屋にしかありませんでした。
そのため、どれだけ「おいしい」とか「身体に良い」とか耳にしても、手に入れ
ることが難しく、まして焼きたてを食べることなど、なかなかできませんでした。
今では「天然酵母」の看板を掲げた店も多くなり、「天然酵母」自体が一般的に普及したこともあって家庭でも楽しむ人が増えています。
ひとくちに天然酵母と言っても、その種類は多種多様で、小麦や果実、芋や米などに付着する菌を培養すると、サワー種、果実種、ホップス種、酒種等を作ることができます。
それらが発酵する力でパン生地を膨らませます。
でも「天然酵母」のほうが「イースト」よりも身体に良いとされるのはなぜでしょう。
「酵母」は英語では「イースト」といいますし、どちらも天然に存在する菌から作られています。
いわゆる「イースト」は果実や穀類からパンに適した菌だけを分離し、化学物質を使用して培養したものです。
ですから使いやすく、いつも同じように作ることができる安定した発酵力をもっています。
一方、化学物質を一切使用せずに培養したものが、一般に「天然酵母」と呼ばれているものです。
そのため、原料や作る人ひとりひとりの技術と個性、環境からのさまざまな影響によって発酵の仕方はもちろん、味も全く異なります。
つまり、素晴らしい味を生み出す可能性を持つ反面、雑菌による変な酸味を生むことも考えられるということです。
ですから世の中の多くのパンの発酵に使われる「イースト」だけを取上げて「良くない」というのは正しくないかもしれませんね。
「天然酵母」のパンが一般的に良いと言われるのは、原料から吟味した自家製の酵母を使い、素材にこだわって手間暇かけて作る作り手の姿がパンのむこうに見えるからだと思います。
食においてただ便利だということだけでは、思いがけない危険な一面を持っている場合もあります。
そんなときにパンの発酵の原点に帰ったような製法のパンは作るには手がかかり、買うには高価になってしまうものの、そういう意味で良いといえるのでしょう。
自然の素材、天然酵母パンは生地の起こし方から焼き方まで多種多様です。
手間と時間はかかりますが、味わい深い天然酵母にトライしてみてはいかがでしょうか。